制作:Business Insider Japan Brand Studio
人口減少による地方衰退を食い止める方法を模索しながら、個人の安定的な資産形成にも貢献する。「社会貢献」にも「個人の利益」にも目を配り、この二項対立にも見えるテーマに挑んできたのが不動産事業を展開するみらいアセットだ。
同社が2022年より展開する不動産投資クラウドファンディング「みらファン」は、地域にとって大切な場所を守りながら投資家の安定的な資産形成をサポートできることが特徴。どんな課題を乗り越えられる可能性を秘めているのか。
「みらファン」を牽引する磯部悟氏が掲げるビジョンにフォーカスを当てながら、福島県国見町を拠点に地方創生に奮闘してきた小林味愛氏の見解も聞いた。
地方の衰退は誰にとっても他人事ではない

磯部悟(いそべ・さとる)氏/みらいアセット代表取締役。1972年生まれ。静岡県出身。名古屋大学卒業後、東海銀行(現・三菱UFJ銀行)に入行。2003年に経営相談・財務支援を主体とする現・みらいホールディングスを創業。翌年、不動産仲介、不動産流動化支援を目的とし、みらいアセットを設立。その後は不動産賃貸・管理業務のアットイン設立に参加、経営に携わり2014年にグループ化。現在はグループ7社を率いている。2019年に不動産特定共同事業法1号免許を取得。
──みらいアセットを含むみらいグループは「ひとのこころを大事にし、みらいに良い事をつくる、つなぐ」という経営理念を掲げていますが、もともと磯部さんにとって地方創生は“自分事”としても興味があった分野なのでしょうか?
磯部悟氏(以下、磯部):私は静岡県出身で、典型的な田舎育ちの野生児。子どもの頃は当たり前のように自転車に乗って川や海に遊びに行きましたし、林の中でカブトムシの匂いを察知できるほど五感が鍛えられていました(笑)。ゆえに日本の原風景に強い愛着があり、自分の故郷に限らず、地方の町が存続の危機に直面しているニュースを目の当たりにすると胸が痛くなります。

小林味愛(こばやし・みあい)/陽と人(ひとびと)代表取締役。1987年東京都立川市生まれ。2010年慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、衆議院調査局入局、経済産業省へ出向。2014年に退職し、日本総合研究所へ入社。全国各地で地域活性化事業に携わる。2017年8月、福島県国見町にて株式会社陽と人を設立。子育てをしながら、福島県と東京都の2 拠点居住生活を送る。
──小林さんは福島県国見町を拠点に地域に密着した活動をされていますが、やはり近年は空き家が増えてきていますか?
小林味愛氏(以下、小林):そうですね。国見町は人口8000人ほどの町ですが、人口が減っているので取り壊されるビルも増えていますし、今分かっているだけでも空き家が200軒以上あると言われています。
でも、地方では使われなくなった場所がリノベーションされて子どもたちが集まれる施設に生まれ変わり、それをきっかけに人が集まってエリアの価値が上がっていく事例も見てきました。そういう活動が全国各地で多発するような仕組みが少ないことが日本の課題なのですが……。
磯部:我々、みらいアセットも創業以来20年に渡って不動産事業に携わってきましたが、都市等の一部を除く地方の収益不動産の価値が下落していることに大きな課題意識を抱いています。富の偏在が著しい昨今、限られた富裕層は高利回りが期待できる都内の物件に集中して投資する傾向があることがひとつの要因です。
また、先祖代々の不動産を受け継ぐことを重荷に感じている二世や三世が増えていることも悩ましい問題でした。結果、まだ有効活用できる可能性がある住宅や商業ビルが修繕されずにどんどん劣化してしまうわけです。
小林:地方が弱体化していることは、都心で暮らす方々にとっても無関心ではいられない問題だと思っています。食料やエネルギーの生産地である地方が存続できなくなったら、都会の生活や消費も維持できなくなってしまいますからね。とはいえ物価が上がり続けている今、将来のための財産形成も重要なテーマで、個人の利益と社会の利益を並行して考えるのはなかなか難しいですよね。
磯部:おっしゃる通りです。我々もたくさんの課題に直面しながら「地方創生」と「多くの方々に安心できる投資機会をご提供すること」を両立する方法を模索してきました。そして2022年12月に満を持してスタートさせた事業が不動産投資クラウドファンディングの「みらファン」です。
地域の重要な不動産をみんなで買い支え、未来をつなぐ

──「みらファン」は、オンラインで完結する手軽さと小額からの投資(1口1万円〜)が可能であることが特徴です。不動産投資初心者でも始めやすい商品だと思いますが、どんな仕組みで運用されている投資手法なのでしょうか?
磯部:不動産クラウドファンディングは、不動産特定共同事業法に基づく事業許可を受けた事業者に認められたオンラインで不動産投資ができるサービスです。ある特定の不動産を限られた期間だけ出資者で共同所有して、その不動産の運用から得られた家賃収入などの利益を出資者に分配するという投資方法ですね。不動産の運営・運用・管理を一括で当社が行うため、難しい賃貸管理の知識や経験は必要ありません。
そして「みらファン」は主に住居用・商業用の古き良き建物などを投資対象にしています。地域に必要とされる不動産をみんなで買い支えながら、地方を活性化させ、みんなで豊かになることを目指す。それを実現できる仕組みだと信じています。
小林:私も以前、不動産投資を経験したことがありますが、それこそ専門家にオススメされるのは都心の高利回りの物件ばかりで。地方と結びつけることが難しいイメージでしたが、実際にどんな不動産を扱っているのかが気になります。
磯部:例えば愛知県西尾市の西尾駅前では築36年の商業住居ビルを「みらファン」で商品化しました。西尾市は名古屋から車で1時間ほどの場所にある町で、抹茶の生産地(西尾茶)として有名ですが、全国的に知名度が高い市とまでは言えず、不動産投資家にとって投資対象とはなりにくいエリアです。
そこで我々は、「みらファン」に投資していただいた方々に向けて、弊社グループが運営する西尾市の温浴施設入浴券をプレゼントすることにしました。

──投資をきっかけに現地に訪れ、愛着を持ってもらう取り組みですね。
磯部:その入浴券がフリマアプリに一部出品されている光景を見てしまったこともありますが(笑)。
小林:たとえフリマアプリに出品されても西尾市の知名度アップに貢献しているのは間違いないですよね。たくさんの人に関心を持ってもらうことが地方創生の一歩目だと思いますし。
磯部:もうひとつ事例を紹介させていただくと、愛知県海部郡蟹江町では築38年の商業ビルを商品化しました。そこは学習塾やクリニック、美容室や事務所が入っていて、地域にとってはなくてはならない物件だったのですが、知名度等でなかなか投資の需要が低いエリアで……。
そのまま何もしなければ取り壊されていたと思いますが、「みらファン」で商品化をしたら2000名を超える方にご投資いただき、組成額が計3億2000万円を超えました。「地域に必要とされている場所を残す」という役割を少しは果たせているのではないかと思っています。
小林:すごく魅力的な選択肢ですね。これまでも地方の空き物件をリノベーションすることを目的に個人でクラウドファンディングに挑戦する人が多かったですが、200万円を集めるだけでも大変で、地元の特産品などを返礼品として送ると手元にほとんど資金が残らないケースも多いようです。
──ちなみに「みらファン」で扱う不動産はどんな基準で選別されているのでしょうか。
磯部:地域にとって重要な不動産であることはもちろん、当社の専門チームが調査をして、収益を出し続けることができると判断された物件に絞って商品化しています。これまで合計11の商品組成をしてきましたが、配当実績は平均6%です。もちろんテナントが撤退した場合などは予定利回りが出ないこともありますが、その場合は最終的に不動産の売却益から配当を出させていただくこともあります。
小林:小額から投資できるのであれば、ふるさと納税に近い感覚で始められそうですね。もっと早く知りたかったです。
不動産投資が「選挙の一票」と同等の価値を持つ

──「みらファン」の商品は愛知県の不動産がメインなのでしょうか。
磯部:これまでは弊社が根を張る愛知県の不動産が多かったのですが、今後はグループのつながりを活かして全国に展開していく予定です。ちょうど今は群馬県館林市にある「HOTEL R9 The Yard 館林新栄」の商品化を予定しており、9月初旬に投資の募集を始める予定です。
このホテルはコンテナ型で使い勝手がよく、ビジネスユースや観光需要が見込まれるだけでなく、震災時に避難できるレスキューホテルとして、地域にとっても重要な役割を果たす存在になると思っています。

──今後は全国の投資家や起業家がポテンシャルの高い不動産を掘り起こし、「みらファン」を開発資金調達のインフラとして使えるようになる可能性もありますか?
磯部:まさに、我々が目指しているのはそれなんです。「みんなでつくる」ことをコンセプトにしているので、地域にとって重要な不動産を投資家さんから提案していただき、「みらファン」で商品化することにより、みんなで買い支える事例を増やしていきたいと考えています。
小林:私の身の回りだけでも空き店舗を改修してまちづくりに貢献しようとしている起業家がたくさんいるので、確実に需要があると思います。投資する側から見ても、お金を出すことで地方に貢献する実感を得ながら、自分も収益を得られる設計になっていることが面白いですよね。
この考え方は、不動産だけでなくいろんな分野に応用できるような気もします。やはり行政の補助金や地元の銀行に頼るのは限界があり、持続性も見込めないので、今後はWin-Winを見込めるカタチで人と人をつなぐ仕組みが必要。それを再確認できました。

磯部:今は住宅や商業ビルを対象にしていますが、ゆくゆくは地域のスポーツ施設など、税収が減って維持管理が難しくなった公共施設も扱っていきたいと考えています。その場合、6%も利回りは出せないと思いますが、生まれ育った町の機能を維持するという目的があれば、たくさんの人に投資する意義を感じていただけるのではないかと。
小林:まちづくりに関わる投資をすることは、選挙で一票を投じるのと同じぐらい価値があると思います。公共施設の管理は「行政の責任でしょ」みたいに他人事として捉えがちですが、その意識を変えるような事例が「みらファン」によって増えていくことを期待します。
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